平清盛の熊野詣
「そもそも、平家かやうに繁昌せられけることを、いかにといふ に〔どういうわけかというと〕、熊野権現の御利生(ごりしょう)に てぞありける。〔熊野権現のご利益によるのであった〕」。 桓武天皇(かんむてんのう)から数えて九代の孫・平清盛が、父・ 平忠盛(たいらのただもり)より受け継いだ殿上人の地位をあしがが りに異例の出世を遂げたのは、熊野権現のご利益によってであると、 平家隆盛のことを話し、そのご利益とは、平清盛がまだそれほどの 地位でない、安芸守(あきのかみ)であったときに、伊勢より熊野詣 でをしようと船旅の途中、大きな鱸(すずき)が船に飛び込んできた これを清盛は、熊野権現よりの賜り物と、一族郎党で食べたことに より、熊野権現の力を得ることができたと言うのです。このことは 熊野水軍の力・熊野三党(くまのさんとう)[宇井・鈴木・榎本]の力 をも手に入れた事を暗示しています。