癒しの熊野詣
 「蟻の熊野詣」といわれたほどの熊野三山のにぎわいの基をつくったのは、 全国の信者の家々を廻って熊野権現の教えをひろめ、 熊野山へ案内した「御師・先達・比丘・比丘尼」達でした。 中でも女性による女性の救済を目的に熊野信仰をひろめた熊野比丘尼たちは 他に類をみない存在でした。 彼女たちは、「浄・不浄をきらわず、貴賎にかかわらず、男女をとわず」 受け入れた熊野の神の教えを「熊野観心十界曼荼羅」・「那智参詣曼荼羅」 の二つの曼荼羅を持ち説いて廻ったのです。「熊野観心十界曼荼羅」では、 現世での行いが来世につながり、地獄にも落ちれば極楽にも行けると絵解きし、 現世利益・来世安穏のため熊野権現を信仰すべきであると、「那智参詣曼荼羅」 で参拝を説いたのです。