円座石
熊野那智大社を出て、大雲取越えの最大の難所「越前峠」を越え ると、熊野川町小口集落までは、長く急峻な下り坂が続きます。昔 の旅篭跡まで下りてきた頃、道端に奇妙な「梵字(ぼんじ)」を刻 んだ大きな「円座石」(わろうざいし)が目に止まります。熊野の 神様たちが座って談笑したところと言われます。3つの梵字は中央 が薬師、左は観音、右は阿弥陀を表現し、熊野三山をシンボライズ した遺物でもあります。 大雲取から熊野川町小口を経て、赤木川に掛かる吊り橋を渡り、船 の渡し場跡を横目に見ながらなだらかな道を登ると、比較的幅広い 石畳の道となります。女性的な歩きやすい石畳には、アカマツの根 が絡みつき、昔日の面影そのままにまっすぐに上を目指して続いて います。誰かがつぶやきました、「まるで、空中回廊を歩いている ようだ。!」