自己発見への旅

現実から本当へ


「だって現実は、現実。逃げたらだめよ。」そんな彼女の言葉が、まだ脳裏に行き来する。林道が切れ、道はほの暗い木立の中を縫うようにずっと続く。 歩く、歩く、ひたすら汗もぬぐわず歩く。突然森が切れ、視界が広がる。どおーっという響きに、思わず谷間をのぞいてみた。 滝壷の水が渦を巻き、すきとおったせせらぎになって、流れてゆく。 時のたつのも忘れ、立ち尽くしていると、滝から巻き上がる一陣の風が吹き渡っていく。からだも、心も、吹き通っていく。 「ああ、本当の風だ。」本当のものに、なかなか出会うことの無い、これが現実、と呼ばれる社会。 熊野で見つける本当の風。そして、見つけてみたい「本当の自分」。



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