命の往還
いにしえの熊野びとは、人に、岩に、鯨に、川に同じいのちを見た。 今、鯨の供養碑の前に立つ。その苔むした石肌に手を当てると、捕鯨ととともに生 きた先人の生きざまが聞こえてくる。いのちを自然の恵みとして、神に祈り、ひたすら感謝して、供養した。 縄文の昔より、本当の生命の尊さを知っていた。あゆの供養塔、木霊塔、今に語り継がれる生と死の往還。 今日、ここ二木島の海は、浦安のごとく平らか。潮をわたる風に運ばれる波音は、 生きとし活けるいのちの意味を、 私たちに語りかけようとする、縄文人の息吹に違いない。
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